「芥川賞受賞作なのに面白い」という評判だし、読書会の課題図書(として図書館が貸してくれる本)のリストにあったので読んでみたところ、字が大きくて140ページほど(単行本版)なので、あっという間に読み終えてしまった。
昔からある「普通」vs「異端者」という対立的な構図に沿うように、この小説もほぼ出てくる人物が「普通」側か「異端」側かに分類できる。
異端側の主人公はコンビニで働くことによって自分自身が成立している「コンビニ人間」としてほとんど完結しており、普通のゾーンにいる人たちを敵に回して戦う……かというとそうでもなくて、渋々ながら調子を最低限だけ合わせているといったポジションにいる。
主人公はわかりやすい疎外感やわかりやすい孤独すら抱えていない。ところが白羽という、敵のような味方のような、もっとねじけた男が現れることで、それを機にコンビニ人間としての自分を再発見するといった内容である。
この小説を図式化して「作者はこの作品を通じて、普通とはいったい何なのか、普通でいなければいけないのか、といった問いかけをしているのですねえ」といったお説教のような解釈はしたくない。どういう訳か世の中にはそういう「作者は◎◎を批判している」という形にまとめたがる人が多い。
個人的にはこの先、主人公がコンビニの優秀な店員として店を仕切り、ホイホイ出世していって、それにともなう周囲の反応をこと細かに描いたら面白くなるのではと期待するのだが、そういったコメディ風のエンタメっぽい展開になる前にこの小説はサッと終わってしまい、そこが良くも悪くも芥川賞っぽいともいえる。とりあえず、読書会の課題図書にするのはちょっと見送りたい。