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読んだ本の感想やメモなど

「ぱいかじ南海作戦」椎名誠

 

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前回の続き。これも椎名誠の本で、長編小説である。

発端は、主人公の男に「失業と離婚が同時に来た」という状況で、もう何もかも投げ出して、というほどいい加減ではないがそれに近いような心境で南の島へ行く、というもの。

椎名誠は読書家でもあるので、大幅に「そりゃないだろ」という変な展開や無理すぎる設定はない、という安心感がある。しかしそう細々とした準備をしてから書き始めるというタイプでもなさそうなので、やや不安に思う気持ちもなくはない。

 

ぱいかじ南海作戦 (新潮文庫)

ぱいかじ南海作戦 (新潮文庫)

 

 

この作品も序盤でちょっと驚くような展開があって「おっ!」と思ったのだが、それ以降はジワジワと緊張感を保ちつつもごく普通に進む。このブログを読んでいる人に本作をお勧めできるかどうかとなると微妙である。ただし最後の2ページくらいになって再び「おおっ!」と思わせるような点があって、具体的には書けないが、主人公の心境がああいう風になるとは意外だった。

ところが椎名誠と目黒考二の対談の発言によると、ラストは「とっても常套的(目黒)」と厳しい。

 

椎名誠 旅する文学館 » Blog Archive » 『ぱいかじ南海作戦』

 

私とは評価がまるで正反対なのだが、おそらく目黒考二は椎名誠にもっと素晴らしいラストを期待していたので、期待値の高さからすると退屈な終わり方に見えたのではないだろうか。私はそもそも「こういった、いかにも皆が揃ってお終いという終わり方なんだろうなあ」程度の予想しか立てずに読んでいて、つまり期待値が低かったからビックリできたのである。

こうした漠然と誰もが持っている「期待値」は、創作物の印象をかなり左右する、いや上下するものではないだろうか。

自分自身の最近の例でいうと中島京子の「妻が椎茸だったころ」は期待値を高く設定しすぎて「なあんだ」という印象しか持てなかったし、ドラマの「シャーロック」はもともとやや高めの期待値を遥かに上回り続けてくれた。

 

妻が椎茸だったころ (講談社文庫)

妻が椎茸だったころ (講談社文庫)

 
『SHERLOCK/シャーロック』 DVD プチ・ボックス シーズン1

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たとえ何かが退屈に思えたとしても、それは「自分の期待値が高すぎたせいなのだ」と考えれば慰めになるし、腹も立たない。これは趣味だけでなく、生活全般の知恵として身につけておきたいくらいの教訓である。