久々に筒井康隆を読んで、文章を前へ前へと読ませる力に驚いた。
聖人伝のパロディのような、また現代の日本において「聖人」はいかに成立するか、という問いへの答でもあるような作品で、冒頭の事件Aから、必然としてBとなり、ということはCになるはずで、ならばD、という論理的な連関が絶え間なく続く。
この先はどうなることかと思われた疑似家族的な関係を感動的に盛り上げてしまう、瑠璃にまつわる一連の流れが見事で、その後に真のクライマックスが訪れるのも見事だった。
古語や死語を散りばめつつ、省略に省略を加える文章ながら厚みのある作品世界になっている。