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読んだ本の感想やメモなど

「栗本薫 全著書レビュー」浜名湖うなぎ

 

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最近「カクヨム」で文章を書いたり読んだりしているのだが、先日「栗本薫 全著作レビュー」という著書別のレビューを発見して、読みふけってしまった。長いシリーズものも1巻ずつレビューしているという労作である。

 

kakuyomu.jp

 

私も中学生の頃は栗本薫(および中島梓名義の評論やエッセー)の大ファンで、とにかく夢中で読んだ。あの短い数年間は、この人の書く評論や小説はすごい!面白い!天才!と頭から信じ込んでいた。

結果的には反面教師となった面の方が大きいのだが、それでも影響を受けたことは認めざるを得ない。ミステリ、SF、ファンタジー、時代小説、現代もの、それに「やおい」と、一つのジャンルに定住しなかった人だったので、当時は「小説新潮」に「十二ヶ月で十二のジャンルの短編を書く」というコンセプトの連載を持っていたほどである。おかげで様々なジャンルに抵抗なく進めたともいえる。

 

十二ヶ月 栗本薫バラエティ劇場

十二ヶ月 栗本薫バラエティ劇場

 
十二ヶ月―栗本薫バラエティ劇場 (新潮文庫)

十二ヶ月―栗本薫バラエティ劇場 (新潮文庫)

 

 

90年代以降は、ちょっと人騒がせな発言をする人、というポジションになってしまい(それ以前から一般的には人気作家というより「ヒントでピントに出てた人でしょ」という扱いだった)、自分も成長した分、自然に興味を失ってしまった。

いま現在の視点から多くの著書を冷静に振り返ると、当時の胸のときめきと、恥ずかしさとが混じり合うようで、居ても立ってもいられないような思いがこみ上げてくる。

 

 松本清張を意識したであろう、テンプレのような社会派ミステリー。オチが妙におセンチなのが栗本薫流。だいたい他の作家の作品を劣化コピーしておセンチをふりまくのが栗本薫流なのである。

 よって社会派小説の出来としてはどうかと思うが、自分は清張より好きだ。おセンチだから。

 

 今作は何年も前に見た夢をそのまんま文章にしたものだという。初読時は「はえ~小説家は夢のなかまで物語なのか~」と素直に思ったが、いまにして思うと若い頃の薫は夢に見るほど輝きたくて、でも輝ける訳がないという諦念に満ちていたのかと思うと、純代少女に切なくなる。

 

 若くしてガンで亡くなった母方の叔父の闘病を支えた親友、五来さんについて語った私小説。

 文章がいつもよりもぐっと落ち着き、まるで普通の大人の身辺小説のようなたたずまいを見せつつ、しっかりと読みやすいあたりは、さすが文体模写で短編を書かせれば当代一であった栗本薫である。こういう小説やエッセイじみた物をお固い文芸誌に定期的に発表していれば、もっと文壇での扱いもちがっただろうに。

(略)

 ただ、叔父の親友である五来さんという人物を、本人に聞くのではなく、外から眺めている視点は、その距離感がなかなかに面白い。強面で、存在感を消すようにたたずみ、しかし弔事のときには親友を呼び捨て熱くあの世での再会を誓いながら、決して自分と叔父の過去のことをくわしく語ろうとはしなかった五来さん。

 ごまかして書いてはいるが「明るいイケメンリア充の叔父さんに恋慕を秘めた非モテの五来さん」という四十年にわたる片思いホモを観察しているようにしか見えない。

 

いずれも「十二ヶ月」の短編の評で、「純代」は栗本薫の本名である。レビューを書いている浜名湖うなぎ氏は常に抑えきれないほど「愛憎入り混じる」といったトーンで、長い時間をかけて醸成されたような熱気がこもっている。

元ファンにとっては、実に悲喜劇的な、泣くに泣けず、笑うに笑えない、しかし笑えて泣けるような文章である。