歴史学者の網野善彦の奥さんのお兄さんの子が中沢新一、という「甥と叔父さん」関係の視点から互いの交流の歴史をまとめた追悼エッセイ。
網野善彦の著作を読んだことのない人には入門書としても親しみやすい内容ではないかと思う。「網野歴史学」などと大袈裟に言わなくても「もののけ姫」や隆慶一郎の時代小説、半村良の伝奇SFを少しでも見たり読んだりしていればさほど抵抗なくスルッと読める筈(聖域に関する部分とか、アウトサイダー的な身分の人々が歴史に関与しているとか)。
中沢新一の文章を読んでいていつも思うのは、いわゆる「序論→本論→結論」といったきれいな流れになっていないということで、全体の三分の二くらいまでは面白いのに、唐突に終っていたり、理解しやすいありきたりな結論になりそうな所をプイッと避けて終ったりというものが多い。
本書は亡き叔父との交流の記録なのでゴールが見えている筈なのに唐突に終ってしまったような印象である。とはいえ文章も内容も実に美しく、他の著作も読み返してみたくなった。