めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「津波の霊たち 3.11 死と生の物語」リチャード・ロイド・パリー

東日本大震災クラスの大きな災害は、立場によって意見や書き方にブレがあって、どれがスタンダードな、客観的な、きちんとした報告なのか、よくわからない。

この本はイギリスの文学賞を受賞したというので、それなりの客観性があるのではと考えて読んでみた。

大きな流れとしては二つあって、ひとつは小学校の教師が生徒を誘導し損なった(「山に逃げた方がいい」という声を無視して、変な方向へ引率した)話題で、もうひとつは津波で命を失った人々の霊が生き残った人々に憑依するという話題である。

 

 

前半はけっこう夢中で読んだものの、後半はやや失速気味で、特に霊関係は「ある日、とつぜん動物の霊にとりつかれて吠えだした」といった話を疑いもなくそのまま書いてあるので、ついて行けない。

この本は「本当にあった怖ろしい話」ではなくて、まともなノンフィクションとして書かれているのに、そこはどうも検討が浅い。たとえば宗教関係者が除霊をする場合、報酬はいくらくらい受け取っているのだろうか。受け取っていないとしたら無料で行っているのだろうか。

不謹慎かもしれないが、そういう点にまったく触れていない点や、タイトルの副題の「物語」という表現にも逃げを感じてしまう。