めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「カフカとの対話」グスタフ・ヤノーホ

グスタフ・ヤノーホがカフカと交わした対話集。

感銘を受ける言葉があるとページの端を折っておくのが癖なのだが、折ったページが多すぎて本が膨れてしまった。発言の一つ一つが箴言的で、生まれながらの作家という感じがする。

カフカは物静かで、内に強いものを秘めていて、時には名探偵のように常識とは逆のことを言い始める。

聞き手が「それはなぜか?」と質問すると、簡潔で明瞭な答えが返ってくる。そういう部分は古風な探偵小説のようでもある。

特に踊り子、写真、ピカソに関する話題など。ピカソの部分は後でまたもう一度出てきて、これは助手の逆襲といった趣がある。

 

カフカとの対話―― 手記と追想 (始まりの本)

カフカとの対話―― 手記と追想 (始まりの本)

 

 

ポオ、チェスタトン、ドストエフスキー、老子、それにディケンズなどに関する発言も面白かった。カフカがディケンズを好んで読んでいるとは、何となくイメージと違う。

 

ディケンズは私の好きな作家の一人です。そう、彼はしばらくの間、私が達しようとして果たさなかったお手本でさえありました。

 

利口な人たちの多くは賢明ではない。だから結局、利口でも決してないのです。こうした人々は、彼ら自身の無意味な卑俗に対する不安から、非人間的になるだけのことです。

 

理性の検証に耐える情熱だけが、力と深さを持つのです。

 

真実にいたる道に、道案内はありません。ここでは、辛抱強い捨て身の冒険だけが有効です。

 

人間に下された刑の宣告は生であって、死ではないのです。

 

悲劇にいたる過程は、悲劇の結末よりも無惨です。

 

攻撃はただのまやかしであり、通常、自分にも世間にも弱みを見せまいとする駆け引きにすぎません。本当に持続する力は耐えることにのみあるのです。弱い人間だけが、忍耐を失い、粗暴になるのです。

 

言葉は、正確で硬い輪郭を持たねばなりません。

 

あなたは、蜉蝣のようなものにあまりかかずらいすぎるようです。こうした現代の書物は、今日のゆらめく反映にすぎない。

 

きょうの美しさは、あす滑稽に見えようがためだ。これが世の文芸の歩む道です。

 

私が描いたのは人間ではない。私はひとつの出来事を物語ったのです。これは一連の形象です。それだけです。

 

富とはまったく相対的で、飽き足ることのないものだ。

 

たぶん日光は、内部の暗黒から私たちをそらせてくれます。

 

決定的なのは、身をもって流れに逆らう個人なのです。