下巻はいろいろと仲違いしていた関係が修復されたり、前向きに新しい一歩が踏み出されたりで一応まとまるのだが、本来は上中下巻で語るべき大きな話がシューッと縮んでまとまってしまったような感があり、やや残念。
個人的には群像劇という要素を考え直した。明治維新も大きなスケールで、日本各地であれこれの人物がからむ群像劇だし、歴史的事件も現実も、いわば群像劇と見ることができる。
とりわけ「群像劇としての明治維新」という考え方は自分で思いついて自分でなるほどと思った。歴史が好きな人は、どの時代も群像劇として楽しめるのかもしれない。歴史の知識がほとんどない人は、登場人物紹介のあたりで躓いている、楽しみ下手ということになるのではないか。
本作は皆が内面を隠し、探り合っているような面があり、スパイ小説風のスリルとサスペンス要素の多い作品でもある。