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読んだ本の感想やメモなど

「死ぬことと見つけたり〈下〉」隆慶一郎

 

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下巻は第八話から十五話まで。最後まで読むと、作者が残した梗概(第十六、十七話)とその後のプランらしきものが編集部によってまとめられていて、概要はつかめるようになっている。

上巻では常に死を覚悟している主人公(とその相棒的親友)の存在が奇妙で、特異な小説を読んでいるような気がしたものだが、読み終わってみると忠義のために尽くした一人の武士の姿が印象に残るので、そういう意味では普通の歴史物である。

読んでいるうちに登場人物が年をとって、子供が結婚したりもするので愛着が湧いてくる。愛着といえば佐賀鍋島藩のことなど、距離的にも精神的にも何とも思っていなかった自分が、いつの間にか「取り潰しだけはご勘弁を……」的な心境に到っているので意外である。どうしてもこの藩だけは守り抜く、という風に心が向いてしまうのである。

 

死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)

死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)

 

 

エピソードとしてはほぼ毎度のように斬り合いやアクション的な場面が出てくるようになっていて、呪術をめぐる第八話、海難事故の第十話、スナイパー物のような第十二話、果し合いの十四話、など盛りだくさんである。

単純にエンターテイメントとして面白いし、文章が論理的で読むのが苦にならない。そして論理的な文章が書けるということは、論理を延長して逆説的な文章も書けるということになる。

 

 嘘つきは自分をかばうために嘘をつくわけではない。相手を失望させたくないばかりに嘘を云う。相手の心が傷つくのが見ていられなくて嘘をつくのだ。その心は優しさに溢れていると云っていい。

 それに較べて正直者の心はむごい。相手の傷みより、自分が嘘をつく傷みの方を避けようとするのだから当然である。かたくなであり、頑固であると云うよりも先に、自分を守る心が強い、利己的だと云うべきであろう。

 

こういう逆説が好きなので、新年最初の小説としては実に良かった。

 

葉隠入門 (新潮文庫)

葉隠入門 (新潮文庫)

 

 

いい機会なので、ついでに三島由紀夫の「葉隠入門」も読もうかと思っている。


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