めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「頭の良くなる薬」のような本

内田樹の文章や対談を読んでいると、特定の本を読むことで頭の回転がよくなる、という話が繰り返し出てくる。

 ブログにも書いてあるので一部を引用する。

 

クロード・レヴィ=ストロースは論文を書き始める前には必ずマルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール 18 日』を繙読するそうである。
別にその中に人類学的知見が豊かに述べられているからではない。
マルクスを数頁読むと、がぜん頭の回転がよろしくなり、筆が走り出すからである。
私が論文を書き始める前に「あんこもの」を食すのと(スケールは違うが)理屈はいっしょである。
マルクスは私たちの思考に「キックを入れる」。
多くの読者たちはおそらくそのような効果を期待してこれまでマルクスを読んできたはずである。
私はそれでよいと思う。
マルクスを読んで「マルクスは何が言いたいのか?」というふうに訓詁学的な問いを立てるのは、あまり効率のよい頭の使い方ではない。
それよりはむしろ、「マルクスを読んでいるうちに、急に・・・がしたくなった」というふうに話が横滑りをし始めることの方がずっと楽しいことだと思う。

 

blog.tatsuru.com

 

ブリュメール18日 (平凡社ライブラリー)

ブリュメール18日 (平凡社ライブラリー)

 

 

こういう風に、思考を刺激する書き手や特定の本は私の場合もある。

いわば「頭の良くなる薬」のようなもので、実際に「頭の良くなる薬」が売り出されたらかなり売れる筈だが、それに近い効果を与えてくれる本は個人的には「ある」のだ。しかしそれを読めば必ず調子がよくなるというものでもないので、間を少し置いて、ほどほどの服用量にしておくと効果が持続するようである。

たとえば昨日もほんの2、3ページほど大江健三郎の「遅れてきた青年」を読んだだけで、頭の動きが急に活発になったようだった。

 

遅れてきた青年 (新潮文庫)

遅れてきた青年 (新潮文庫)

 

 

ただし80年代以降の大江健三郎の作品ではほとんど効果がなくて、初期からせいぜい70年代までの作品が効くようである。しかしそれも作品によって微妙に効果が異なる。とりわけ「飼育」「セヴンティーン」「芽むしり仔撃ち」は効果が強い。

 

死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

 
大江健三郎自選短篇 (岩波文庫)

大江健三郎自選短篇 (岩波文庫)

 
芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

芽むしり仔撃ち (新潮文庫)

 

 

その頃の文章には、独特の熱気とリアリティと、さらに意外性と詩と想像力とが混在しており、そのために思考が活気づくのではないかと思うのだが、うまく説明できない。

他の書き手では、心理学者のスティーブン・ピンカー、小説家では倉橋由美子、三島由紀夫、SF作家のハインラインとクラークにも同様の効果を感じることがある。コラムニストの山本夏彦にも効果を感じる。チェスタトンにも感じる。小松左京にもちょっと感じる。具体的な例としては以下の著書を挙げておく。

 

人間の本性を考える  ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)

 

 

聖少女 (新潮文庫)

聖少女 (新潮文庫)

 

 

作家論 - 新装版 (中公文庫)

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夏への扉[新訳版]

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太陽系最後の日 (ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク 1) (ハヤカワ文庫SF)

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何用あって月世界へ―山本夏彦名言集 (文春文庫)

何用あって月世界へ―山本夏彦名言集 (文春文庫)

 

 

正統とは何か

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小松左京セレクション 2: 未来 (河出文庫)

小松左京セレクション 2: 未来 (河出文庫)

 

 

読むと頭のグルーヴが良くなるというか、エンジンが動き出すというか、精神の姿勢が正されるというか、とにかくそういう風に「なる」のだ。

ついでに言うと音楽ではジェームス・ブラウンを大音量で聴くと、全身の疲労物質や悪い菌が駆除されたように感じる。

 

www.youtube.com

 


James Brown - I Got The Feelin'

 

風邪くらいなら、JBを聴けば治るぜ!と叫びたくなる。