めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「ぼくがいま、死について思うこと」椎名誠

今年の春先から自分が責任者になって読書会を行っている。夏ごろから本格的に人を集めていくうちに今では6~7名に増えてくれたので、定員いっぱいまであと数人という状況にまでなった。

人集めはこれでよいのだが、どんな本を選ぶかが難しい。

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「SLAM DUNK 新装再編版 3」井上雄彦

3巻のサブタイトルは「初試合・陵南戦1」である。前年度県大会ベスト4の実力校の陵南戦がじっくり描かれるので、ほぼバスケばかりの巻になる。冒頭の電車内でズンズン歩くシーンなど「あっ、これ覚えてる!」と言いたくなるようなコマがチラホラあるので、一度は読んでいることが確実である。

しかし初戦だけあって、後のベストメンバーにはほど遠い。ゴリ、流川が先発なのは当然として、それ以外はヤス、メガネ君、潮崎君という珍しいメンバー構成。ヤスとメガネ君はともかく、潮崎君はもしかすると最初から最後まで桜木花道との絡みがなかったのではないかと思うほど影の薄い存在である。

 

SLAM DUNK 新装再編版 3 (愛蔵版コミックス)

SLAM DUNK 新装再編版 3 (愛蔵版コミックス)

 

 

敵チームのスーパースター、仙道はこの巻の50ページになってやっとシルエットで登場し、続くページでやっとニコニコキャラであることが判明する(微笑三太郎の系統か)。

ところで前回の感想で、柔道部の主将が出てくる辺りの印象の薄さについて触れたのだが、スラムダンクの全31巻は「ドカベン」のピークが31巻にあることを意識していたという話があるくらいなので、最初の方に柔道部の話題が出てくるのは「ドカベン」へのオマージュなのかもしれない。

 

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ドカベン水島氏×スラムダンク井上氏のBIG対談~少年チャンピオン41号~ - サトのおたから帖

 

さて試合は「相手チームがすごいので押される」→「そこを流川選手が打開!」という前半あるある的な展開である。とにかく湘北側はゴリ・流川コンビしか戦力がない。

よってゴリ×魚住が五分五分で、いくら才能があるとはいえ相手も天才系の仙道×流川は、2年の天才と1年の天才で分が悪い。しかしそれでも「さあ いこーか(89ページ)」と仙道に挑発されて「さあ 行こーか(130ページ)」と流川が意地を張り合って盛り上げる。

で前半はいい調子で善戦して、後半はゴリ退場から桜木登場、そこで主人公がディフェンスの才能の片鱗を見せる、といったところまで。

「SLAM DUNK 新装再編版 2 」井上雄彦

新装再編版の2巻は、前半がほとんど不良青春コメディ漫画のようなノリで、柔道部の勧誘を桜木が振り払うまでの話。以前も読もうと思えば読めた筈だが、ここはあまり読む気がせずにスルーしたのではないかと思われる。

とはいえ「ハルコさんの髪にゴリの顔」という夢の部分は見た記憶があるので、我ながらやや怪しい記憶である。

 

SLAM DUNK 新装再編版 2 (愛蔵版コミックス)

SLAM DUNK 新装再編版 2 (愛蔵版コミックス)

 

 

今にして思えば、バスケの話題になかなかストレートに入って行かないのは不思議なくらいだが、当時は「バスケ漫画」で成功した先例がなかったので、バスケを知らない読者を引き入れるための布石としてこうしたエピソードが必要だったのだろうなと思わせる。私自身もバスケは中学高校の体育の授業でやったきりで、当時ですらサッカーと同じ感覚でタックルしたら怒られた記憶がある程には素人である。

で、あれこれあって柔道部のキャプテンの誘い(+ハルコさんの幼少期の写真の誘惑)を断り、桜木がバスケ部を選び「バスケットマンだからだ」という宣言をする。それを遠くからゴリも聴く場面があって、ここでついにハルコさんのためというより「バスケのためにバスケを選んだ桜木」になる訳だが、少し唐突な印象が否めない。一体バスケのどういう点に魅力を感じているのか、ただの負けず嫌いなのか、細かい心理がややはっきりしない。

しかしここから後はバスケの話に傾いて、基本的なシュートを学ぶ(が、なかなか上手くいかない)、陵南のデータマン・相田彦一(ドカベンの吾朗ちゃん風)が湘北にやって来て桜木を流川だと勘違いするというコメディ的な展開などを経て、陵南戦前夜~「試合の朝が来た―――!」というナレーションまでで2巻が終る。

 

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ここで面白いのは陵南のエース・仙道の姿が名前のみで姿がずっと伏せられている点である。あの髪型くらいはわかるように描けばよさそうなものだが、シルエットすら出さないのである。こういった「重要人物をあえて出さずにじらす」というのはよくある手法のようで、なかなか例を思いつかないが、あえて探すと映画「デーヴ」の副大統領がなかなか出てこない、というじらし加減くらいだろうか。もしかすると単に「仙道」というキャラクターのルックスが、直前まで決まらなかっただけなのかもしれない。