めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「びんぼう自慢」古今亭志ん生

飲む、打つ、買うは当たり前で、着ている物すら何かにつけて質屋に入れて、家賃は払ったことがほとんどなくて、戦争中も酒のことしか考えておらず、改名を16回したという落語家、古今亭志ん生の半生記。

 

びんぼう自慢 (ちくま文庫)

びんぼう自慢 (ちくま文庫)

 

 

「貧乏はするもんじゃありません。味わうものですな」その生き方が落語そのものと言われた五代目古今亭志ん生がこの世を去って三十有余年。今なお落語ファンを魅了してやまない師匠が、自らの人生を語り尽した名著。父のこと、少年時代、売れなかった極貧時代、なめくじ長屋の真実、関東大震災、三道楽、満州慰問、息子たち(金原亭馬生、古今亭志ん朝)のことなど…志ん生伝説のすべてがここにある。

 

どのページで死んでもおかしくないような、メチャクチャな人生である。

聞き書きを起こした形なので、喋り言葉がそのまま文章になっていて、読んでいてずっと愉快な気分が続く。貧乏のあまり赤蛙を食べたり、有名ななめくじ長屋の話など実に面白い。

 

出るの出ねえのなんて、そんな生やさしいものじゃァありません。なにしろ、家ン中の壁なんてえものは、なめくじが這って歩いたあとが、銀色に光りかがやいている。今ならなんですよ、そっくりあの壁ェ切りとって、額ぶちへ入れて、美術の展覧会にでも出せば、それこそ一等当選間違いなしてえことになるだろうと思うくらい、きれいでしたよ。

 

子供が熱ゥ出したり、腹ァこわしたりする。くすり屋の前なんぞいつも素通りだから、塩水をのますと、なんとなくなおっちまう。ウンとわるいときは、ニンニクをすって、そのまンま口の中へほうり込んでやる。子供ァ泣きますよ。その泣いた口へ、アメ玉ァひとつ入れてやる。それでピタリとなおるんですから、貧乏人にとってはありがたいくすりでしたよ。


「だくだく」の辺りを読んで、「オバケのQ太郎」は落語経由のギャグが結構多かったのではないかなと思い当たった。

 

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