池波正太郎の書生として、十年も仕えたという人の回想記である。
この本のあとがきで、冷奴の食べ方が小説から引用されている。
井戸水でよく冷やした豆腐の上へ摩り生姜をのせ、これに、醤油と酒を合わせたものへ胡麻の油を二、三滴落したものをかけまわして食べるのが、小兵衛の夏の好物であった。
これ以外にも松茸のフライとか松茸チャーハンとか、本書にはいろいろと高級そうな料理が出てくる。読んでいると食べたくなってウズウズするが、すぐに真似できそうなものは上記の冷奴しかなかったので、読後すぐにやってみた。
要は醤油だけでなく、酒を混ぜて胡麻油を少し垂らせばいいだけの話である。ついでにめんつゆも少々加えて、葱と生姜で食べてみた。
結果は……。
大正解!!
胡麻油をチョロッと垂らした時点でもう「お店の味」!!というレベルになっているのである。たかが冷奴など、切った豆腐に過ぎないと見ていた愚かな冷奴観が変わるほどの衝撃であった。この記事にたまたま目をとめている皆さんにはぜひ、お勧めしたい。