俳諧連句の付句をまとめた本が「武玉川」で、その中からさらに田辺聖子が選んだ句を解説した新書。どの句も軽妙で温か味があって、時に鋭い。
武玉川・とくとく清水―古川柳の世界 (岩波新書 新赤版 (791))
- 作者: 田辺聖子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/06/20
- メディア: 新書
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田辺聖子は平易な文章の中に、見たこともないような言葉をちらりと混ぜるので、知らない語句を類推しながら読むという感覚を思い出させてくれる。
この本と並行して戸板康二の本も読んでいて、たまたま両方に「浮世風呂」が出てきたりもして、興味をそそられる。
特によいと思った句。
俯向けば言訳よりも美しき
夕ぐれや桜に沈む人の声
石の地蔵の清い唇
世の中を忘れたやうな蚊帳の中
みどり子の欠伸の口の美しき
親もなく生れたやうに美しき
涅槃像あらゆる涙こぼしけり
硝子に金魚の命すき透り
握られた手を抱いてくる尼
美しい女房叱るが自慢にて
飛脚の顔を煽ぐ女房
鶴の死ぬのを亀が見て居る
福原麟太郎の随筆集も手に入れたので、田辺聖子関係と並行して読むことにする。