「終盤講座の最高傑作」と帯に書かれたこの本は本当に名著である。
相手玉の基本的な寄せ方を解説した講義だが、基本問題とその解説、練習問題という流れが3セットある。この問題それぞれが良問揃いで、かつ講義も難しすぎるということが無く、周到に構成されている。
もともと詰め将棋や必至の問題はアッと驚くような、目から鱗が落ちるような手が多いものだが、それにしても単なる解答と数行の解説、といった形式の本がほとんどで、必然手へと至る過程をじわじわと語る、その語り自体が見事と思わせる本は珍しい。
寄せが見える本 〈基礎編〉 (最強将棋レクチャーブックス (1))
- 作者: 森けい二
- 出版社/メーカー: 浅川書房
- 発売日: 2004/04/21
- メディア: 単行本
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難問に見える問題がいつの間にか基礎中の基礎的な問題の復習に戻っているケースが何度かあって、こういう用意周到な講義を受けることができるというのは、実に幸せなことだと思った。
自分は教えたり教えられたりという機会が多いので「よい教え方」「よい授業」「よい先生」について考えることも必然的に多くなる。この本はそうした面についても考えさせられた。
よい教え方は、生徒の労力を軽くするものだし、単純な所から初めて複雑で深い地点まで生徒を運ぶ力がある。
「理解した」という快感を与える。
よい授業は、周到に構成されている。
そして、よい授業は先生に対する敬意だけでなく、教えられた物事への敬意を育む。
よい先生は、複雑な物事を簡潔に整理して伝える。
よい先生の語る言葉には無駄が無くて、反復には必ず意図があり有益である。
本書にはその全てがある。