太平洋戦争の最初の一日、および終戦までの最後の十五日間の記録を整理し「同日」「同刻」のものを並べたノンフィクションで、いま風に言うとあっちこっちの本からコピペしたような、それでいて編集センスの光る本。
記録を残しているのはやはり作家、学者などの知識人が多い。
同日同刻―太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 (ちくま文庫)
- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/08
- メディア: 文庫
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今の目から見て単純に「いい」だの「悪い」だのと言えない面もあるが、単純に喜んで興奮している知識人が多い中、露伴、谷崎潤一郎はやはりと言うか何と言うか、他の知識人の反応とは違う。
真珠湾攻撃の話を聞いた露伴の言葉。
「考えてもごらん、まだ咲かないこれからの男の子なんだ。それが暁の暗い空へ、冷や酒一杯で、この世とも日本とも離れて遠いところへ、そんな風に発っていったのだ。なんといっていいんだか、わからないじゃないか」
その頃、上野では谷崎潤一郎が寿司屋でマグロをビフテキ風に焼いてもらって、「マグテキ」と称して食べている。
私は必ずフィリピンかハワイ辺から時を移さず爆撃機が襲来することと思い、ビクビクしながら食べていたが、そのスリルのゆえに一層その夜のマグテキは美味に感ぜられた。