小沢昭一の本は、テーマが何であれ、形式(聞き書き・エッセー・対談など)が何であれ、みなユーモアがある。
本人が飄々としていて、何をやっても面白い人なのだが、知らない人にその面白さを説明するとなると今後は難しくなるのかもしれない。そもそも本業は最後まで俳優だったのかどうか、晩年はラジオで話をするのがメインの仕事になったのかどうか、文筆家としての評価が高いのかどうか、その辺りは私もよく知らない。
この本は小沢昭一の句集で、もしかすると今後は「小沢昭一の代表作」としての座を占めることになるかもしれない本である。昭和四十四年から晩年までの四千句を収録している。
きんたまに両手かさねて夜寒かな
足の蚊を足で打ちつつ長電話
四月馬鹿度を過ごしたり仲たがい
パッと散る目高よ何もしやせんぞ
舌たらす犬のまねして炎天下
花冷えやほったらかした詰将棋
バッテラの語源談義をよそに食ふ
わざわざ言うまでもなくユーモラスな句が多い。
大雨や台風に襲われた休日など、じっと家にいるしかないような日でも手許にこういう本があると一日中、楽しめて退屈しない。そういう日にじっくり読みたいような本である。
ちなみに箱から出すと、横長でタテ1に対してヨコ1.5くらいの比率の本なので、開くとタテ1に対して横幅3くらいになる。