松本大洋の絵は癖が強いので、何となく「入っていけない」という先入観を持っていた。しかし本作は読み始めるとスルッと入っていけて、説明のなさが読みやすさを上げているように感じられた。
児童養護施設にいる子供の姿を追った話なので、シリアスで重いかというと、そうでもない。ナレーションや説明的な台詞がほぼゼロに近いため、カメラを介してその世界を眺めているように読める。
それでも嘘を言っている子供の発現は嘘であることが伝わってくるし、強がりを言っている場合もやはり強がりであるとわかる。そういえばこの人の奥さんの冬野さほも、子供の淋しさや居場所のなさ、孤独感を軽く巧みに描く人であった。