ナルニア国シリーズの第四作。100ページあたりまで読んでもなかなか冒険が始まらないので、少々じれったい。
で、三人で冒険の旅に出るのだが、今ひとつ目の覚めるような鮮やかな活躍はなく、風だの寒さだのの描写に読んでいる方まで暗い気持ちになってしまう。
- 作者: C.S.ルイス,ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田貞二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/06/16
- メディア: ペーパーバック
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中盤が宮沢賢治の有名な童話風の展開(ちょっとガリバー風のところもある)になって、その後は「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」といった感じになってクライマックスになだれこむ。
さすがに最大の山場はそれなりに重いテーマを扱っており、何だかジーンとしてしまった。
ただこれも「現実vs信仰」「現実vs理想」「現実vs空想」という対置の仕方が微妙に成立しきれていないようなところがあって、やや計算違いのようにも見える。言いたいことはわかるけれども、反論されてしまいそうな弱さが残っているという感じ。
通して読んで思うのは、2,3,4巻で一続きの長いお話になっているということで、前回書いた悲壮な感じは最終章で頂点をむかえる。ただ悲壮なトーンで話が終わるわけではなく、むしろそれを避けようとするあまりちょっとバタバタしすぎという印象を受けてしまった。
全体としては1,2,3巻ほどの完成度の高さには至らず、2,3,4巻の一続きのお話の締めの役割という感じ。
1. この話はタイトルの「銀のいす」が何であるかという謎が途中まったく触れられず、唐突に出てきて唐突にまとまってしまうところが欠点である。
2. 「泥足にがえもん」というのは凄い訳だが、実際はどういう名前なのだろうか。何となくイメージとしてはスナフキンと沼田元氣を足して二で割ったような感じだけども。
3. 相変わらず食べ物はおいしそう。特に最終章はここぞとばかりになぜかその手の描写が多い(胃袋が二つあるとどうなるか、等)。
4. 暗闇から出たと思ったら実は……、という部分からベスターの「虎よ、虎よ!」を連想する。あの小説の独創かと思っていたが、どちらが先なのか。あるいは別の有名なルーツがあるのだろうか。
5. 最終章の最後の一文が洒落ている。