全七巻の「ナルニア国ものがたり」の第一作目。
「カスピアン王子のつのぶえ」が面白かったので、再読してみた。
本を読んで泣いたという経験がほとんどないのだが、例外的にホロリときたのがこの「ライオンと魔女」の14章と向田邦子の「あ・うん」である。今回もかなり胸に迫るものがあった。
ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)
- 作者: C.S.ルイス,ポーリン・ベインズ,C.S. Lewis,瀬田貞二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/06/16
- メディア: ペーパーバック
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それはともかく、自分が読んで忘れているシーンも結構あった。たとえば非常に有名な、あの人が出てきて剣やつのぶえや弓矢をくれるシーンとか、エピローグのあたりとか。自分がもうこれは「読んだ」と思っている本でも実際は忘れている部分がかなりあるのだ。
他にいくつか気になったところを挙げると、
1. 食べ物の描写がおいしそう。
「やわらかくゆでた茶色の卵がめいめいに一つずつ出ましたし、トーストは、小イワシをのせたもの、バターをぬったもの、ミツをつけたものがありました。」
「緑色の絹のリボンでしばった、まるい箱が一つあらわれ、それをひらくと、おいしそうなプリンがどっさりでてきました。どのプリンもふわふわして、あまくて、これ以上おいしいものをエドマンドは食べたことがありませんでした。」
2. 地の文の中に(カッコ)が入って、補足的な説明がされるところが結構ある。これがちょっとした味になっている。傑作なのは、書き手の本音がコメント風に入る場合。
「……半時間前にとった新鮮な川魚を半分まえにフライパンから皿にうつして食べるほど、すばらしいことはないと、子どもたちは思いました(わたしもそうだと思います)。」
3. 省略。これも何とも言いがたい独特の効果がある。
「これは何ページにわたって書いても書きつくせないほど、長く続きました。」
「アスランが何を話したかは、みなさんにお話しするひつようがないでしょう。それに、ほかにきいた者もいないのです。」
4. AがBであり、同時にCでもDでもあるという描写が時々出てくる。これは2巻にもあったように思う。
「その音色は、ルーシィの心に、泣きたいような、わらいたいような、おどりだしたいような、しかもねむたいような気もちを、同時にかきたてました。」
5、印象的な描写。
「けれども、夜どおし起きていて、涙がかれるほど泣きつづけた者には、さいごには、澄んだおちつきが生まれるのです。」