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読んだ本の感想やメモなど

「ノリーのおわらない物語」ニコルソン・ベイカー

9歳の女の子の視点から書かれた話。ストーリーはあるようなないような調子で、強いて言うならいじめられっ子の友人を主人公が守ることが後半の柱になる。

しかし、この小説の肝は一にも二にも「子供の頭の中身(訳者あとがきより)」にあって、子供ならではの間違った表現によって描かれる描写が楽しい。

 

ノリーのおわらない物語 (白水uブックス)

ノリーのおわらない物語 (白水uブックス)

 

 

ほとんど2ページに一度はその手の語句が出てくる。

その間違い方が絶妙で「ハードル」と書くべき所を「バーベル」とか、「五里夢中」とか「しゃむにむ」「ぞんどこ」「だいじょばない」「これにて一件着陸」「病院のIBM」とか、枚挙に暇がない。

他にも子供の世界ならではの「ヒソヒソさけび」とか「ベロを長いあいだ突きだして完ぺきにかわかそうとする」といった仕草や心理のいずれも面白い。

読みながら、余りにも(いい意味で)内容が無いのでちょっとハラハラしたほどだが、最後の章の最後の段落では感動した。

 

ノリーはタイトルのところに『やくにたつ ひょう語』と書こうとしたけど、『う』まで書いたらいっぱいになっちゃたので、『う』の上に雲の形のふきだしをつけて、中に『語』と書いて、『う』が『語』のことをしみじみ思いだしてるみたいな感じにした。

 

神さまというのは人間の良い部分のこと

 

むかしむかし、おっきい穴が二こありました。そしたらおっきいくっさくトラックがきて穴の中に入って、どろどろの泥んこになりました。そいで、あんよ洗って、おめめ洗って、ぜんぶきれいきれいになりました、おしまい

 

(友情)のしんの部分は、ただいつもべったりいっしょにいたり、つごうのいいときだけ仲よくしたりすることじゃないし、なんでも競争して勝ちたがることでもぜったいにないし、ふざけて乱暴なことをするのでもない、もっと、相手の人に自分の心の中をぜんぶ見せることだ。

 

だから本の説明はむつかしいけど、自分が読んだ本を他のだれかも読んでて、その本について話し合うと、もっともっと楽しくなるから、がんばって説明するのはやっぱりいいことだ。でも、相手の人がスカして『ああその本ね、そんなのとっくに読んじゃったわ。すっごく子供っぽくてバカみたいな本よね』とか言ったりしたら何にもならないけど。