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読んだ本の感想やメモなど

「化粧」井上ひさし

 

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井上ひさしの書いた一人芝居の戯曲で、本そのものが少し変わった構成になっている。

 

化粧

化粧

 

 

見開きのページの右側には実際の舞台で役を演じる女優の写真、左側に戯曲、さらに両方のページの下段に細長く主演女優のコメント(「芸談」と書いてある)がついていて、国語の教科書の下の注釈のようである。その上、巻末には資料として当時の劇評や対談もついている。

内容は旅回りの女座長が、開演直前の楽屋で出番を待っているところにテレビ局の人間が訪れ、それと並行して芝居の台詞を合わせたりしているうちに虚実が重なって……、という話。もともと一幕の芝居だったものが後日「第二幕」も加えられたという。

井上ひさしの戯曲は何作か読んだことがあるが、趣向や工夫が多すぎて息苦しいような印象だった。「化粧」は短いのでツルリと読めて、贅沢な一皿料理を食べたような満足感を得た。

父親の代替物はいくらでもあるが、母親の方は替えがきかない、という言葉が印象に残る。

子守唄を歌うシーンがあって、その歌詞が、

「ねんねん猫のケツに蟹が這いこんだァ」

「も一度ほじくり出して鍋で煮て食べたァ」

というもの。

こういうヘンテコな歌を唐突に歌うところに「母親」らしさを感じる。母親に特有のおかしさや残酷さや温かさのよく出ている歌詞で、私にとって母親とはそういうものである。