タイトルの通り、誰がデザインしたのか意識すらせずに日々触れている身近な商品ほかのデザインに着目した本。
とり上げられているのは乾電池、キャンパスノート、タバコ、カップヌードル、カール、デパートの包装紙などなど。「懐かしい」という感情を猛烈に掻き立てるようなものもあるし、今まで気付かなかったその美しさにハッとさせられるデザインもあるしで、何かと発見の多い本だった。
- 作者: 渡部千春,『デザインの現場』編集部
- 出版社/メーカー: 美術出版社
- 発売日: 2004/09/16
- メディア: 単行本
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わざわざお金を出して美術館に行かなくても、大衆に支持され続けている優れたデザインはそこら中にあるということ。そして美しさはその対象にあるのではなくて、それを見る目と心の側にこそあるということ。ヤクルトの容器のウェストのくぼみは「持ちやすさ」と「飲み応え」を生んでいるということ。カールにはピザ味があったこと。カップヌードルの容器は白地に赤と金であること。ハイライトのデザインは和田誠であること……、は知っていたけれども、読んでいくうちに「デザインであることを意識させないデザイン」の良さのようなものが自ずと感じられてくる。
てな考えを予期したかのように「第4章 公共のデザイン」では、LONDON A-Z/パスポート/成田国際空港のサインシステム/JR東海のサインシステム/郵便ハガキ、といったもののデザインが紹介される。
一番驚いたのはロンドンの地図で、地図における「地名の表示のバランス」「角度」「向き」といったデザインこそは無味無臭デザイン芸術の極致ではないかと思った。見る目さえあれば、パッと地図を広げて「うーんこの地名表示のデザインはいいね」と感心することができるのだ。