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読んだ本の感想やメモなど

「ソーネチカ」リュミドラ・ウリツカヤ

 

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10年以上も前に書いた読書記録を読み返していると、時々、ほとんど読んだ記憶のない本の感想が出てくる。クレスト・ブックスの「ソーネチカ」は読み終えた直後から「感想を書きにくい」と自分が嘆いている本である。

 

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

 

 

クレスト・ブックスのアンケートで、4人もこの本を挙げているので気になって読んでみた。


ストーリーはほとんど無いというか、ただ地味な女性の一生を描いただけの中編で、主要な登場人物がソーネチカとその夫、娘、娘の友達の4人だけ。しかし冒頭の、

「赤ちゃんなのか子供なのかわからないような幼いときから、ソーネチカは本の虫だった。」

という一文から惹きこまれて、退屈なところがまるでない。

 

エピソードが印象的とか、大どんでん返しとか、奇矯な人物が大勢出てくるとか、一人の女性の一生を通じて浮かび上がるロシア史とか、本に関する衒学的な知識とか、そういう売り文句になりそうな特徴がないのに、すんなり読めてしまう。どこが良いのかうまく把握しにくい。

 

カバーには「最愛の夫の秘密を知って彼女は…。」と思わせぶりに書いてある。確かにその部分がこの小説のクライマックスではあるものの、そこを劇的に見せようとか、感動させてやれという意識がほとんど感じられない。確実に言えるのは丁寧に書かれた小説が丁寧に訳されているということくらいで、しかし丁寧と言っても息苦しくなるほどの細かさはない。むしろ文末に時々入る「…。」がこちらをほどよくリラックスさせてくれて、速すぎず遅すぎず、甘すぎず苦すぎずといったテンポとトーンで進む、「ごく普通の小説」としか言いようのない普通さ。そういう普通の味がかえって新鮮、という訳でもないし、何と誉めていいのかよく分からない。主人公のソーネチカに共感する、というものでもないし、でも微量の面白さが延々と続く。そのキープ力が一番の魅力ということだろうか。

 

この小説は国外で評価が高いとのことで、フランスのメディシス賞、イタリアの何とか賞を受賞している。もしこの小説が日本を舞台にした日本人の小説だったとしたらどうだろうか、同じような話で同じような描写だったとしても読み通せるかどうか自信がない。海外のもので、訳文がよかったからこそ読めたという感じ。

 

という訳で今この感想を読んでみると、困っている自分の様子が面白い。もっと細かく人物描写などについても書いてあるのだが、とにかく内容をさっぱり思い出せない。

 

ヤーシャのイメージは自分の中では何となくエマニュエル・ベアール。

 

と書いてあるが、内容を思い出せなくても何となく「それは違うだろ!」と言いたくなる。ほとんど思い出せないが、とにかくエマニュエル・ベアールは読書好きっぽさが無さ過ぎる。