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めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「茶話」薄田泣菫

 

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大正時代に書かれた新聞の人気コラム集。

「総数800篇余から精選した154篇」というだけあって面白いし、各編が平均1ページ半あるかないかといった程度の短さなのですぐ読めた。

解説にあるように「シニカル」であっても「人間嫌い」ではなくて、文章に余裕のあるユーモアが漂う。

 

茶話 (岩波文庫)

茶話 (岩波文庫)

 

 

集中ちょっと気になったのは、少年が猫を殺す話で、酒鬼薔薇聖斗の事件があった際にも「猫殺し」は話題になったことがあったが、猫を殺す人間はやがて人間を殺すようになる確率が高いそうである。

そういう理屈を踏まえると「猫が化けて出る」というのは、凶悪犯罪を事前に牽制して抑えるための知恵ではないかと考えられる。

しかしこの「茶話」に限らず、三島由紀夫の小説にも大杉栄の自伝にも猫殺しは出てくる。つまり酒鬼薔薇の彼だけが例外的人物で現代の狂気が産んだ特異な精神を持って猫を殺したというよりは、ほとんどの時代に見られる、よくある行為であるらしい。

ただ決定的に違うのはその後の周囲の反応で、大杉栄の場合は母親がビンタをかますし、「茶話」の場合は少年のお腹の中から猫の声が聞こえてきて、という展開の後でかなりきつい処置がある。その結果、きちんと元の平和な状態に戻るのだ。

昔は親や周囲の判断や常識といった世間知があったのに対して、今は庶民が心理学用語を振りまわす割には何の役にも立っていないという印象を受ける。

上に書いたこととは無関係だが、猫が死ぬ際の「辞世の句も読まずに死んだ」という部分はすごくいい。こういうユーモアは非常に好き。