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めちゃくちゃブックス

読んだ本の感想やメモなど

「未来者たちに」高橋睦郎

 

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図書館にあった本で、詩人の高橋睦郎によるエッセーと講演。

内容は新聞に連載された短いエッセーが主で、それも東洋の自然観と西洋の自然観の違いとか、今の競争ばかりの社会はよろしくない、各自好きなことをするのが一番、努力が大切、質素が大切といったような、どこかで見たか読んだかしたような内容が多い。

従ってハズレの本かというとそうではなくて、ひたひたと波が寄せるような印象を受ける文章の力というものを感じた。凝った言い回しや奇抜なアイディア、視点というものには乏しいにもかかわらず、いつの間にか心が静まり、澄んでいくような感覚を久々に味わった。今までにも何冊か高橋睦郎の本を読んではいるが、そういう印象を受けたのは今回が初めて。他にこういう感覚を感じるのは鴎外の翻訳くらいなので貴重である。似たようなテイストでも例えば堀江敏幸は波長が合わない。

 

未来者たちに

未来者たちに

 

 

集中面白かったのは、チェルノブイリの原発事故があった際にキエフ公演の予定があった中村歌右衛門のエピソード。

役人が「国と国との約束だからぜひ行ってくれ」と説得しに行ったところ「あたしはいいのよ、でもこの子がね嫌だって言うの」とぬいぐるみの熊ちゃんのせいにした為、想定問答の範囲外の返事に対応できなかった役人は引き下がるしかなかった。この機転によって国際親善歌舞伎団は被爆を免れたという。