子供の頃、「魔太郎がくる!」には今ひとつ乗れなかったが「ヤドカリ一家」のエピソードだけはやけに強く印象に残っていた。
その後、中学の頃に乱歩が編集したアンソロジー「世界短編傑作集」の4巻で「銀の仮面」を読んで、何だこれが元ネタだったのかと知ることになった。
- 作者: ヒュー・シーモアウォルポール,Hugh Seymour Walpole,倉阪鬼一郎
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
同じような経験をした人は他にも多いらしく、その後は「魔少年ビーティー」などにまで影響関係が見て取れるそうである(自分は昔読んだが覚えていない)。
38歳の主婦菜月は奇天烈な会合に誘われて……日々の「?」をまな板に載せ、老若女女が語らえば--人との関わりに小さな戸惑いを覚える貴女に贈る、コミカルで奥深いガールズトーク小説。
川上弘美の「これでよろしくて?」は確かにガールズトーク小説ではあるものの、それはいわばレコードのA面にあたる面で、並行して語られるB面の流れの方は、上記の乗っ取り系の系譜に連なるような、日常の出来事の範囲内で起こるホラーめいた話になっている。
終盤で主人公とその相手とが、きちんと対決する形に一応なるのだが、迫力もスリルもあり、妙な可笑しさも同時にあって面白いし、そこに至るまでの事態が少しずつ深刻になるなり方も、解決のされ方もリアルでよい。
川上弘美の作品は小説もエッセーも、作り話めいた日記も(ついでに言うなら俳句すら)常にどこかしら乱歩の持ち上げた「奇妙な味」の成分が入っており、いま現在、日経新聞の夕刊に連載されている「森へ行きましょう」もやはり同様である。