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MEKURU VOL.07:特集「みんなのキョンキョン、誰も知らない小泉今日子」の記事 ベスト5

この雑誌の小泉今日子特集号が即日売り切れになったというニュースをしばらく前に見かけて、興味を感じたもののその後はすっかり忘れていた。

 

MEKURU VOL.07 (小泉今日子)

MEKURU VOL.07 (小泉今日子)

 

 

特集「みんなのキョンキョン、誰も知らない小泉今日子」

表紙の人=小泉今日子

16歳でデビューして以来、アイドル、女優、歌手、文筆家と様々な顔を持ち、日本の芸能史に歴史を刻む人物でありながら、いまもなお時代の一歩先を行く稀有な存在として輝き続ける小泉今日子。

彼女が生きてきたエンターテインメント史を振り返るロング・インタビューと周辺人物が語る「小泉論」、写真家・森栄喜による貴重な撮り下ろし写真により、「小泉今日子という才能」を徹底的に解き明かす大特集です。

○ 小泉今日子ロング・インタビュー

○ 写真家・森栄喜による撮り下ろしフォトストーリー

○ 27名による「わたしの中の小泉今日子」

松田聖子 /吉本ばなな /YOU /本木雅弘 /秋元康 /飯田久彦 /田村充義 /菊池毅 /木谷徹 /佐藤雅彦
中島信也 /久世朋子 /小竹正人 /中井貴一 /渡辺えり /崔洋一 /田辺順子 /岩松了 /宮藤官九郎 /磯山晶
宮本理江子 /村田雅幸 /鮎川彬 /中森明夫 /糸井重里 /母・由美 /周防郁雄

 

たまたま近所の書店で平積みになっていたのをパラパラ読んでみたところ、止まらなくなったので買って読んでみた。 

本人のインタビューは勿論、様々な関係者のインタビューやエッセー、コメントのそれぞれに読み応えがあって良かった。例外は関係者の中でも相当に古い仲である筈ながらコメントが短く、本人の写真がまるまる1ページ掲載されている有名人なのだが、それが誰であるかは書かないでおく。

様々な視点からの小泉今日子評がある中で、共通して浮かび上がる像は「プロデューサー的資質を持っている」「細かい気配りがある」「威張らない・驕らない」「自然体」「努力家」などである。これらの共通項が異口同音に次々と出てくるのだが、同時にこれらの要素とは重ならない独自の見方をしている人もチラホラいて、そこが実に興味深い。

ベスト5に入れたくて僅差で入らなかった記事としては、小竹正人、渡辺えり、宮藤官九郎、母・由美、岩松了、佐藤雅彦などを挙げたい。いずれも距離が近い人・かつて近かった人ならではの言葉があって唸らされた。

 

そんな中から5つに絞ってみるとして、

第五位は!

YOUの「小泉今日子 作文」!

これは「小」「泉」「今」「日」「子」と五つの単語に分解してそれぞれに短文を寄せた、技ありの小泉今日子評である。

 

ある日、彼女のベッドを占領して寝た挙げ句、見当たらないのでリビングに探しに行くと、ソファでスースー寝ていて、可愛かったのですがお腹が空いていたので「お腹が空いたよー」と、ちっさい声で言ったんです。起きなくて当然のボリュームで。そしたらパチッと目を開けて「朝ご飯つくるね」と、ささっとでっかいおにぎりとお味噌汁を作ってくれました。温泉に行っても一番に起きてささっと布団を畳んで、新聞読んでるみたいな人です。

 

この部分など、小泉今日子その人を目の前で見ているような気にさせる。何度も読み返してしまった。

 

 

続いて第四位!

久世朋子!

久世光彦の奥様で、他の人にはない角度から小泉今日子像を語っている。

 

久世は、井上靖の「三宮炎上」を、ずうっと昔から撮ってみたいと思ってました。美しい不良少女・オミツが啖呵を切る画を撮りたかったんでしょうね。

今になって思うのですが、久世は今日子ちゃんをオミツに重ねていたんじゃないかと思うのです。

 

三ノ宮炎上 (集英社文庫)

三ノ宮炎上 (集英社文庫)

 

 

また、久世光彦と小泉今日子が似ているという話もある。

 

今日子ちゃんと親しくさせていただくようになって、久世とすごく似ているんだなということがわかったんですよ。同じ種族みたいな感じなんですよね(笑)。ふたりともすごく頭が良い。ものを知っている頭の良さじゃなく、自分で考える力のある頭の良さを持っているから、どんなことにも応用できるんです。(中略)きっと、向田邦子さんと同じぐらい、特別な存在だったと思います。

 

言われてみれば確かに、その聡明さも凛々しさも繊細さも気配りも似ているのかもしれない。久世光彦が向田邦子を見送ったように、小泉今日子も久世光彦をこの世から見送ることになった。

 

 

いよいよベスト3の第三位!

本木雅弘!

ともに82年組みのアイドルでありながら、その後は道を模索して俳優・女優に落ち着いたというコースも、覚めた自己認識を持っているという点でもよく似ている。

この人は常に「本物ーニセモノ」という対立項で物事を見るような所があって、長い期間ずっと併走してきた同世代・同業界人ならではの小泉今日子評になっている。

ちょいちょい出てくる短いエピソードが、クリスマス関係、芸能人水泳大会、エイズ疑惑、演技評、互いの交流など、どれも印象的である。

 

 

続いて第二位!

中井貴一!

本書の中で、唯一「小泉くん」と呼んでいる人物が中井貴一である。

一体、何の権利があっての「くん」呼ばわりなのか理解に苦しむが、その発言は濃くて重みがある。

 

僕が一番彼女に魅力を感じるのは、実は「弱さ」なんです。芝居をしていると、その人の本質みたいなものが自然と見えてくるんですね。とくに『最後から二番目の恋』のようにセリフ量の多いものは自分が隠せない。

 

小泉くんは、これからもう一花咲かせるでしょうね。あの人の、人を見る目はたいしたものですから。プロデューサー視点ですよね。これから人を育てていくという段階に入ろうとしているんじゃないかな。

 

 

さて、

いよいよ、

第一位は!

 

糸井重里!

大勢の人があれこれ発言する中で、大トリというか「締め」の部分で総括的な役割を担っている!

 

これまで話したことはすべてその素地ですね。その上で最後に言えるのは……あの顔と体つきじゃないかと思います。結局、見た目で判断されるんですよ。

 

 結局は外見って、身も蓋もなさすぎますけどね。みんなそこを勘定に入れないで話すから(笑)。なんらかの因果が働くと勘違いしちゃうんです。

 

「顔と体つき」……。

あまりにも当然すぎる大前提なので、誰の頭にも思い浮かばないような指摘である。誰の目にも明らかなのに誰も言えない種類の新事実。ぐうの音も出ないほどの逆説的な正論なのであった。

 

 

それにしても、ツイッターでのこのような発言を(たまたま)見るにつけ、本当に裏表の少ない人なのだと感心する。

単なる「いい人」は幾らでもいるが、34年もの間ずっと人気があって、挑戦があって、評価があって、しかも自然体でいて、さらに「これから」もあるというポジションは並大抵の努力や鍛錬で得られるものではない。